アヤックスの財政について【2021/22】
お久しぶりです。会計見習いです。
前回の更新から1年以上空いてしまいました。
年内に何本か投稿できればと考えております。
さて、復帰第一弾となる今回の記事ではアヤックスの財務諸表を解説します。
アヤックスといえば、若手の育成と売却に長けたクラブで、今夏の移籍市場の主役とも言える存在として皆さんの記憶に残っているのではないかと思います。
そのようなクラブ事情を踏まえ、今回の記事では、
アヤックスはなぜ選手を売却する必要があるのか?
選手の売却を通して利益はいくら必要か?
アヤックスの今後の展望は?
これらの疑問に対する答えを考えていきます。
1. 損益計算書の比較
今回の記事では利益に関する項目に注目したいので、損益計算書を使用します。
損益計算書とは、企業が1年間(会計期間)にどれだけの利益を生み出しているかを示す表です。
使用するのは、2021/22と2020/21シーズンの損益計算書です。2021/22ならば2021年7月1日から2022年6月30日、2020/21ならば2020年7月1日から2021年6月30日までが会計期間です。
それでは、損益計算書を見ていきましょう。

※赤色の数字はマイナス
用語の定義
EBITDA = 売上高 + 営業費用
減価償却費: 固定資産に関して毎年定額で計上する費用。
選手登録権の減価償却費: 選手の獲得に要した移籍金 ÷ 契約年数
金融損益: 主に借金の利息の収入と支出を合算したもの。収入>支出なら+、逆なら−。
当期純利益 = EBITDA + 減価償却費 + 金融損益 + 選手売却による利益 + 法人税等
まず、当期純利益に着目すると€24.3mの赤字です。コロナの影響がより深刻であった2020/21よりも数字が悪化しているのは少し意外ですね。どの項目が赤字の悪化に作用したのかを見ていきましょう。
売上高は全体で€64.0mの増加です。内訳を見ると、「入場料収入」、「放映権収入 - UEFA」、「商業収入」が大きく成長しています。入場料収入に関しては、完全ではないもののスタジアムに観客が戻ったことでコロナ前の水準に近づきました。放映権収入に関しては、CLのグループステージ全勝がプラスに働きました。商業収入に関しては、コカ・コーラ等の新規スポンサーの獲得*1とボブ・マーリーから着想を得たユニフォームのヒットに支えられ、数字が伸びました。
Every Little Thing, Gonna Be Alright ❤️🐥💚
— Bob Marley (@bobmarley) 2021年8月20日
Introducing the 2021/22 @AFCAjax ⚽️ third jersey, inspired by #BobMarley and the club's favorite crowd anthem, "Three Little Birds"!
Available now through @adidasfootball and official club stores.#football #soccer #adidas pic.twitter.com/J5iIavFZsm
営業費用は€38.5mの増加です。給料の増加は、契約更新による昇給とCLのグループステージ全勝のボーナスに起因するものです。売上原価と試合の開催費用が含まれるその他営業費用からは、ユニフォームの売上増と通常の営業活動再開の影響が見られますね。
EBITDAは€25.5m増で黒字化に成功しています。当期純利益が悪化した理由はこの先にありそうです。
減価償却費と金融損益は前期とほぼ変化なしです。
選手売却による利益は€37.8mで、€48.3mの減少です。詳しくは後ほど確認しますが、この数字は直近4期の中でも突出して低い数字です。€37.8mを構成する主な取引は、ライアン・フラーフェンベルフ(→バイエルン・ミュンヘン)やダヴィド・ネレス(→シャフタール・ドネツク)です。アントニーやリサンドロ・マルティネスの取引は来期分に計上されるため、この中には含まれせん。
全体を振り返ると、選手売却による利益の重要性は明らかですね。
EBITDAにもう少し余裕がほしいですね。しかし、売上項目に関しては入場料収入を除けば好調と言える数字で、営業費用項目に関しても競争力の維持には避けられない出費ですので、これ以上を望むのは難しいのかもしれません。
次に、重要性の高い項目に関して直近5期の推移を見ていきます。
2. 重要性の高い項目の推移
まず、売上高とその内訳です。

売上高全体を見ると、現在の水準に達したのは2018/19であることがわかります。このシーズンはアヤックスがCLで躍進した年で、ハイライトした放映権収入にその影響が表れています。
2018/19以降に限れば、UEFA主催大会から得られる放映権収入は全体の約3割を占めます。CL出場の重要性が伝わるデータですね。
国内の放映権収入は横ばいです。5大リーグの上位クラブと比較した場合に明確に劣る項目です。
入場料収入はフルキャパシティでの試合数の最も多かった2018/19がピークで、この付近の数字が上限であると思われます。
商業収入は更なる成長の可能性を秘めた分野です。
次に、給料と選手登録権の減価償却費です。

売上高の増加に比例するように、両者ともに増加傾向です。
合計額が売上高に占める割合を見ると、売上高が急増した2018/19とコロナによって大打撃を受けた2020/21を除き、8割台で安定しています。
最後に、選手売却による利益です。

この項目は年度によってばらつきがあります。
損益分岐点での利益は、税引前当期純利益をゼロにするために必要な選手売却による利益の金額を表しています。費用の増加が売上高の増加に追いついた2019/20以降は、それなりに大きな金額が必要になっています。
「(給料 + 選手登録権の減価償却費) / 売上高」が8割台で持続すると仮定した場合、年平均で€55-60m以上の確保を最低限の目標にしたいですね。
現時点では、アントニーやリサンドロ・マルティネスの売却益で多少の不足分を吸収する余裕はあると考えられます。
3. まとめ
以上がアヤックスの財務諸表の解説でした。
国内の放映権収入が5大リーグと比較すると劣るため、ヨーロッパでの競争力を維持するには選手を売却して継続して利益を生み出す必要があるというのがアヤックスの現状です。また、CLへの出場が非常に重要です。
今後に関しては、国内の放映権収入に変化がない限り、緩やかな成長が期待されます。エールディヴィジのCL出場権が今後3枠に拡大する可能性が高いことを踏まえれば、財政上のリスクは縮小傾向にあると思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。